公益社団法人 田川青年会議所
第60代理事長 米丸 知之

【躍動】

~心躍る行動が、新時代をつくる~

はじめに

1962年、石炭産業から石油産業に代わるエネルギー革命が起き、産炭地として栄えた田川の炭鉱は閉山に追い込まれ、全国各地から仕事を求め、移住者で賑わいを見せたまちも人口は減り、衰退の一途を辿る。この危機的状況の中、田川の未来を想い、篤き志を持った33名の青年たちが立ち上がり、同年9月22日に全国で224番目の青年会議所として、田川青年会議所は誕生した。

それから約60年後、全世界にパンデミックを引き起こした、新型コロナウイルス(COVID-19)は我々の生活を一変させた。メディアでは「未曽有の事態」「国難」といった言葉でこの状況を表現しているが、歴史を紐解くと、感染症はいつの時代においても人類を脅かしてきたことは云うまでもなく、多くの感染症が尊い命を奪ってきた。

また、社会的活動に被害が生じる自然災害も同様であり、人間が防ぐことのできない事例が数多くある。いつの時代も、困難というものは我々の前に突然現れる。しかし、困難な状況だからこそ、私たちはチャーターメンバーたちのように、気概と覚悟を持って行動を起こさなければならない。

人びとが不安と恐怖に怯え、見えない敵と戦う、現在(いま)だからこそ、
われわれJAYCEEは
社会的・国家的・国際的な責任を自覚し
志を同じうする者、相集い、力を合わせ
青年としての英知と勇気と情熱をもって
明るい豊かな社会を築き上げよう

青年会議所運動の根本にある、この「綱領」のもと、ひとのため、まちのため、
そして自分たちの大切なもののために、信頼できる仲間と手を取り合い、心一つに行動し、
未来を創造していく。

これが我々「JC」であり、「JAYCEE」である。

60周年 ~継承~

私たち田川青年会議所は、本年9月22日を以って、創立60周年を迎える。
一言で「60年」と云うのは簡単だが、これまで多くの困難にぶつかり、それでも大切なもののために、青年として英知と勇気と情熱をもって、走り続けて来た確かな証である。

時代は常に変化するが、ひとの想いや志は決して変わることはなく、先人たちから受け継いできた伝統ある「襷」を次代へ繋いでいくことが私たちの使命である。もちろん60周年というのはただの通過点でしかない。この時代に生きる私たちもまた、継承者である。その想いと情熱を青年会議所運動へ注いでいくことが、「明るい豊かな社会の実現」へ近づいていくと私は確信する。

ここに改めて、創立時から田川地域の先頭を走り続け、JCの灯を絶やすことなく運動してこられた先輩方へ、心から感謝と敬意を表します。

現状認識からなる、10年後の未来

現在、私たちは危機的状況の中にある。それは、会員減少からなる、組織力、資金力、JCそのものに対する価値の低下があげられるが、昨年は多くの仲間が増え、会員減少という状況から脱却する兆しが見えた転換期の年だと考える。これは目の前にある問題から決して目を背けず、目先のことではなく未来を見据えた行動が生み出した価値ある結果である。人が多いから良い、少ないから悪いというわけではないが、それだけの「ひと」が集い、同じ目的に向かって手を取り合うことができれば、それは必ず大きな力を生み出し、強く地域へ波及していくに違いないと私は考える。

55周年の時、私たちは、3年、5年、10年後の中長期のビジョンを掲げ、本年はその5年目にあたる。その時、その時で時代は変わり、新たな問題が出てくるのは至極当然であり、その変化に柔軟に対応していくことが大事である。しかし、JC運動の本質や目的まで変わってしまうと途端に道に迷い、光を見失ってしまうのは明らかである。

会員が増えた今だからこそ、過去を振り返るのではなく、未来へ進むために「原点」へ立ち返り、新たな仲間と共に、JC運動に全力を注がなければならない。目先のことなどはどうでもいい、
大事なことは、このまち、JCという団体がどうなり、どうあるべきかであり、
確かなビジョンを描き「こころひとつ」に歩んでいくことが大切である。

ひとづくり

「企業は人なり」。これは経営の神様と称えられ、私自身も尊敬する松下幸之助氏の言葉である。企業だけでなく、我々のような団体、おおきく云えば国や地域、まちもすべては人で形成されている。どれだけテクノロジーが優れたとしても、それをつかう「ひと」が育たなければ全く意味がない。人を育てるのも人であり、人が感銘を受け共感するのもまた人である。それは子どもでも大人でも、性別や国籍が違ってもそうであると私は考える。

私たちは、「田川少年会議所」という団体を2015年に立ち上げ、小学校4年生から中学校3年生を対象とし、様々な事業を共に展開してきたが、その多くの場面で子どもたちの成長を目の当たりにした。青少年育成とは、それだけ無限の可能性を秘めたものと云えるだろう。だからこそ、私たちはひとづくりへの探求心をもち続け、決して過去を否定するのではなく、その経験と情熱をもって、さらなるステージへ進まなければならない。また、人財育成というのは子ども世代に限らず、人生に終止符をうつまで、誰もが成長する機会があると私は考える。
それは、私たち青年世代であるJCが率先して実践し、実感しているからだ。

今、「SDGs」といった国連が定める2030年までの国際目標があるが、「国際」という言葉を聞くと少し尻込みをしてしまうかもしれない。しかし、現代社会において「Global」というのは我々の生活に身近であり、その時代の風潮に子どもから高齢者まで無意識に対応していこうとしている。この地域には「川筋気質」といった、他に類を見ない言葉で地域住民の人間味を称えているが、田川人らしい次世代のリーダー(先導するもの)を育成するには、「川筋気質」の篤い心を持った古き良き時代の人柄、そして、「SDGs」や「Global」といった新しい時代に柔軟に対応する感性、この2つが共存する人財こそ、地域に求められ、次代の田川地域に必要なリーダーである。

私たちは、その可能性の先頭に立っているという自覚と俯瞰的な視野をもち、
柔軟な発想で「ひとづくり」を行わなければならない。

まちづくり

まちづくりとは、我々JCが云う、「明るい豊かな社会(たがわ)の実現」に向けた運動である。
それには、前に述べた「ひとづくり」と密接に関係するとつよく感じる。ひとがまちを想い、まちがひとを受け入れ多くのひとが集う、これがよりよい地域社会を創造する手法ではないだろうか。

JCは、住民の意識変革団体であると私は先輩に教えられた。それは決して上から目線な言葉や教えではなく、若き発想力と行動力が住民の方々の意識を変革していくというものだと考える。

まちづくりの課題として、教育、産業、観光、人口減少問題といったものがあげられるだろう。
しかし、明るい豊かな田川を創造していくためには、すべてを一度に求めるのではなく、
ひとつひとつの問題を解決し、たがわがひとつとなり、このまちにしかないできない独自の観点、
手法で「まちづくり」を行うべきである。

まちづくりの原点は、田川が大好きであると他に誇れる「郷土愛」からはじまる。
私たちが愛する田川には多くの自然や、無形民俗文化財、世界記憶遺産といったすばらしい伝統や文化、そして、地域の特色を活かした食文化といったものに満ち溢れている。また、現在活躍する田川出身の芸能人や著名人も地域の宝である。こんなにもすばらしいものに溢れ1市6町1村を活動エリアにしている私たちは恵まれており、これだけのまちを活動範囲にもつ青年会議所も全国的に見ても他にない。それは、JCだけではなく、この田川地域の大きな可能性であると考える。私たちは自分たちのお金で、自分たちの意志でJC運動を行っている。それは誰に何を言われることなく、全力でJCをやれるバイタリティーなのもかもしれない。勘違いでもいい、間違いでもいい、私たちがこの田川を想い、考え、考え、考え抜いた運動であるなら全力でやるべきである。

その地域を想う熱量がさらなるイノベーションを生み、必ず故郷の新たな価値を見出すことができるはずだ。
私たちの「新しい挑戦」こそが、持続可能な地域を創造していく一助へなると信じている。

JC BRAND ~個々の力を組織の力へ~

私の云う、「BRAND(ブランド)」というのは価値である。
先に述べた、「ひとづくり」や「まちづくり」の中で、これらを成していくために重要視されるのが私たちの組織力である。組織力とは何か、それは個々の力を結集し、ひとつの目標に進んでいく力、つまり原動力であると考える。青年会議所の原動力は「ひと」である。しかし、そのひとが成長しなければ組織は衰退してしまい、運動の発信力、影響力は低下してしまう。それは私たちのめざす「明るい豊かな社会の実現」から遠ざかっていき、何のために、誰のためにJCをやっているのか本末転倒である。客観的に見て、JCの価値とはどのようにつくるのか、それはひとやまちにどれだけ重要視され、必要とされているのかではないだろうか。そのためには、私たち自身がさらに魅力ある人財、団体となり、力強い運動を推し進めていくことしかない。偉そうなことをいっても私たちは20歳から40歳までの若き青年経済人の集まりである。日々、個々を磨き、その力を組織の力へ変え、我々自身が、「JC BRAND」という価値になり、地域から必要とされる組織になろう。

会員拡大

昨今、会員減少という問題は全国的に見ても深刻であり、不景気や後継者不足、JCの認知度や地域からの信頼度といった多くの問題があるのかもしれない。しかし、それは私たちの現実逃避ではないだろうか。現状から目を背けず、自分自身、そして、田川青年会議所に矢印を向け、「Why」ではなく、「How」のどうしてという言葉を自らに投げかけ、行動することが重要である。
私たちは何も恥ずかしいことはしていないし、胸を張っていい。JCは多くの成長する機会を皆に与えてくれる。しかし、それを掴むのは自分自身であり、活かすも活かさないも自分である。それらをJCだけでなく、ビジネスやプライベートにもうまく活用することが大事であり、メンバーにはJCを大いに活用してもらいたい。ドラッガーは、「マーケティングの理想とは、販売を不要にすることだ」と述べている。これは誰かが営業をしなくても、自然とものが売れていく仕組みをつくるということだが、拡大の本質はここにあるとつよく感じる。
そうであるならば、「JCI MISSION」や「JCI VISION」への理解をさらに深め、
私が率先してそれらを実践していこう。
55周年の時に掲げた、65周年に100名のメンバーで迎えるために。

友(韓國福岡青年會議所)と共に

私たちは創立50周年を迎えた際に「韓國福岡青年會議所」との友好締結をし、互いに尊重し合い、あれから10年という年月を共に歩みながら、友情を深めてきた。
1993年、韓國福岡青年會議所が中心となり田川市民球場の横に、「翔魂之碑(しょうこんのひ)」が建立された。建立の背景には、日本のエネルギー産業を支えたという石炭産業全盛期に、多くの炭鉱労働者がこの地で命を落としたという、決して忘れてはいけない事実がある。
私たちはこの事実を風化させることなく、後世へ語り継いでいく責務がある。そして、この翔魂之碑参拝事業だけでなく、友好締結10周年という節目の年を迎え、さらなる友好関係の醸成が必要であり、この友情が未来永劫続いていくことが、世界平和へ繋がる確かなものになると確信する。

結びに ~新たなる一歩~

本年、創立60周年という節目の年を迎えるが、それは終着点ではなく、新たな出発点でしかない。
私は、JCがめざす「明るい豊かな社会の実現」は、不可能であると考える。
なぜなら、実現したと想ってしまうと、その時点で明るさ、豊かさは当たり前になってしまうからであり、私たちの運動に終わりはなく、「めざすべきもの」のために、65年、70年、その先に向け走り続けなければならない。
過去は篤き想いと情熱で先人たちが築き、未来は次代の若きリーダーたちが創っていく。
しかし、今この時代、この瞬間を創れるのは私たちにしかできない。
私たちは、微力かもしれないが、決して無力ではない。
小さな一歩が、大きな可能性へと変わるかもしれない。

混沌とした時代だからこそ・・・

我々JCは、社会的、国家的、国際的な責任を自覚し、
志を同じうするもの相集い力を合わせ、
確固たる信念と勇気ある行動で地域(たがわ)のために、躍動しよう。